2010.03.21 ソウル国際マラソン 完走記

 2万5千人の都市型マラソン。 日本事務局もあって参加しやすい。〈参加料は現地の倍になるが) 制限時間5時間。 日本事務所経由で申し込むと、スタート位置が、エリートの部の次のAブロックに並べるという特典もある。

 前日に日本事務所が指定したホテルに行ってゼッケンをもらう。 その場で、30分程度の説明会もしてくれる。 案内にもあったが、念押しで確認したのが、この大会は、エリートの部を除いて、ネットタイム計測でグロスを取らないということだった。 日本の感覚とはずれるが、大人数の大会では、それが本当に実力と言えるのだから、ネット支持派の自分としては賛成。

 今回の目標はサブスリー。 直前3週間のハーフマラソンで、すべて1時間24分切りを果たし、自分としては、絶好調モード。 サブスリーができないはずない、という強い気持ちで臨んだ。

 心配なのは、天候。 ソウルは、日本の東北地方の気候に当たる。 つまり寒い。 1週間前から天気予報が気になった。 晴れの予報は出ていたが、一時、風速8mが出て、風との戦いを覚悟した。 しかし、当日、マラソンの神様が、風を弱めてくれた。

 そして、今回は、家族旅行を兼ねてのソウル訪問だ。

 

 朝、5時30分起床。 会場までは、ホテルから歩いて30分弱。 朝食を済ませ、小走りで行ったら、6時20分には着いた。

 やることは決まっている、 スタート位置の確認、荷物預け位置の確認、そしてトイレだ。 地下にトイレがあったので、寒さをしのげるので、ここと決めて並んだ。だから、外に簡易トイレがどのくらいあってどのくらい混んでいたかはわからなかった。 前日の予報で最低気温は1度。 日の出直後のこの時間は、まさにその最低気温だったと思われる。 トイレは したくてもそうでなくても並ぶ主義だ。 スタート直前に行きたくなら、もう間に合わない。 結局、ここで40分並び、終わった時は7時10分だった。

 ちょっと流しを入れる。 すごく軽い。 OK. サブスリーもらったと思った。 7時25分には、最後の給水を取り、荷物を預け(荷物預けは7時30分まで)、脱ぎ棄て用ジャンパーをランシャツ・ランパンの上に着た。 この大会は、脱ぎ捨てた防寒服を貧困国に寄付するという。 本当にこれは助かる。 このジャンパーがなかったら、サブスリーはできなかったといってもいいくらいだ。

スタート地点 光化門(クヮンファムン)

 エリートの部は150人くらい。 8時00分のスタートしたのを見て、ジャンバーを脱ぎ捨てた。 Aブロックは、エリートの部が出て5分後にスタートということだったが、5分たってもピストルが鳴らない。 アナウンスが続いている。 あれ、日本事務局が10分を間違えたのかな、と思っていたら、突然バーン! 前方のスタートラインまで詰めてからスタートするものとばかり思っていたから、びっくり。 あわてて、時計を押した。

 スタートロス 8秒

 最初の大通り、気持ちがいい。 調子もよさそうだ。

 1キロの表示は、相当ずれていた。 ネットで3分37秒。 あり得ない。 国際陸連ゴールドラベルの大会なのに・・・ これには、がっかり。 次の1キロが4分40秒だった。 平均4分10秒。 OK。

 乙支路(ウルチロ)に入って、折り返し。 今度は風が逆風、どうかと思ったが、これなら走れそうという程度。 OK。

 足先の凍り感覚も心配だったが、5キロまでには解消した。 OK。

 このあたり、ソウルの中心部。 休日の早朝らしく沿道は閑散としていた。 改めて、東京マラソンの凄さを思った。 ずっと、沿道に人がいるものね。 日本人は本当にマラソン好きだ。 やっぱり強化して国技にしなくちゃね。

 5キロ通過 21分07秒 自分の時計 同05秒 (ラップ20分59秒)

 5キロ通過も理想のタイムだ。 東京マラソンほどではないが、下り傾向だったから、20分台もOKだ。

 その後も1キロごとの表示はたびたびずれていたが、5キロごとは正確だと思う。 もちろん42.195キロもだ。 ただ、5キロごとのラップについて、私は、2枚あるマットのうち、前方のマット通過時に時計を押していたが、後方のマットで計測していたようである。 全体の時間は時計と1秒のずれもなかったが、通過時間は5秒ほどのずれがあたので、「自分の時計」も表記する。

6キロからは、清渓川(チョンゲチョン)沿いの道を下る。 清渓川(チョンゲチョン)は、かつて蓋が閉められ上に高速道路が通っていたことろを、2003〜05年にかけて河川の姿に戻され、現在は市民の憩いの場になっているところである。

 この川沿いに入る角は応援スポット。 沿道の静けさが一転、人が集まり、音楽や歓声で賑やかに応援してくれた。 マラソン祭りの雰囲気が出てきた。

清渓川(チョンゲチョン) 左はマラソン歓迎の幕 (前日・翌日撮影)

 ただ、この川沿いの道は、1車線の道。 荒川マラソンくらいか。 走りにくい。 たびたび腕がぶつかった。

 気がついたら、2人の風船を付けた3時間のペースランナーが近くにいた。 追いつかれたのだろう。 とにかく付いていこうかと思うが、ペースが速い。 しかも混雑しているので、ちょっと気を抜くと、自分が後ろにに下がってしまう。 ここは、我慢の区間である。

 それにれにしても、3時間クラスでこんなに多くのランナーがいるとは。 さすがに2万5千人規模だ。 東京マラソンと違い抽選がなく先着順だから、韓国中の足自慢が集結しているのではないだろうか。

 沿道で見ていた私の家族によると、仮装をしている人がいない。 ただ、縄跳びをしながら走っている人がいた言っていた。 沿道に人達との交流というより、どちらかというと一人ひとりが挑戦する大会、それがソウル国際マラソンだと思う。

 10キロ通過 41分55秒 自分の時計 同52秒 (ラップ20分48秒)

 ここまで、川を下る方向だったのだから、ラップ20分台も速すぎたとは言えないと思う。

 そして、今度は、清渓川(チョンゲチョン)を川上に上っていく。 といっても、感覚的にはフラット、坂はたいして感じない。 しかし、相変わらず道が狭く、逆風ということもあり、数字的にはペースが落ちた。 3時間の風船は、見える範囲で、付かず離れず追っていった。

 15キロ通過 1時間03分02秒 自分の時計 同02分59秒 (ラップ21分07秒)

 給水でコップを倒して取り直しロスタイム。 その間に、3時間の風船はぐっと前に行ってしまった。

 16キロから中間点までは、鍾路 (チョンノ)という大通りを緩やかに下っていく。 片側4車線を規制してくれているので、それまでの清渓川(チョンゲチョン)沿いの1車線の道と大違い。 気持ちよく走れる。

 この区間で貯金を増やそうと思った。 主観的には気持ちよく走っている。 しかし、前方の3時間の風船は遠のいていく。 おかしいな。 このペースで追いつけないなんて。 


鍾路 (チョンノ) 左写真風船は3:20のペースランナー    (家族が撮影)

 20キロ通過 1時間24分13秒 自分の時計 同09秒 (ラップ21分11秒)

 やはり、下り区間にもかかわらず、ラップは落ちていた。 これから先に不安を感じる。 3時間の風船はもう全く見えない。

 中間点 1時間28分54秒 自分の時計 同51秒

 中間点のタイムとしては、理想的。 さあ、ここからハーフマラソンスタート! 後半戦に向けて気持ちをリフレッシュした。 22.5キロ地点に、全コース最大傾斜の坂となる、アンダーパスがある。

 しかし、気持ちをと裏腹にペースは上がらない。 相変わらず、下り基調なのにだ。 ラップは初めてサブスリーペースを超えた。

 25キロ通過 1時間45分41秒 自分の時計同35秒 (ラップ21分28秒)

 25キロの給水で、空のコップをつかんでしまうミス。 戻るようにして取ってロスタイム。

 しばらくは、ソウル郊外の住宅団地といったことろを通る。 相変わらず、沿道は無関心だが、応援スポットでは、笛や太鼓の大騒ぎといった感じで歓声を上げてくれる。 ハイタッチを求めてくる人もいて、応えようかととも思ったが、寄らずに直進! 今日はサブスリ−勝負なのだ。

 30キロまでの5キロ区間が、地形的にはアップダウンの一番多いところだったが、たいしたことはない。 ほどんど坂の意識はなく走れる。 しかし、タイムは正直だ。 ラップはさらに落ちた。

 30キロ通過 2時間07分17秒 自分の時計同12秒 (ラップ21分36秒)

 39キロ地点で、3時間ペースからの貯金を1分取っておくこと。 これが、とっとこ流サブスリー攻略のやり方だ。 今日は、その貯金が50秒弱になっていた。 貯金1分あれば、残りをキロ4分20秒でいいのだが、それでは間に合わない。

 ここでも、1キロごとの表示が正確でなく、30〜31キロが4分37秒ときたら、次が4分05秒。 こういう時は、相対的な順位を意識することにしている。 前を見てひとり抜き、また、ひとり抜きをしていれば、失速することはない。

 頭の中で、最近はまっているいきものがかりの曲が繰り返し鳴っていた。 音楽に乗って、前へ前へ。

 全体的には追い越しモードであったけれど、元気なランナーには、何人も抜かれ不安になる。 昨年の青島太平洋の時は、30キロ以降ひとりも抜かれなかったのに、である。 今日は調子がいまいちなのか。それとも韓国のランナーはイーブンで走る賢い人が多いのか。 (あとから考えると、もしかしたら、後にスタートした後ろのブtロックの速いランナーが追いついてきたのかもしれない。)

 35キロ通過 2時間28分56秒 自分の時計同51秒 (ラップ21分39秒)

 いよいよ蚕室(チャムシル)大橋だ。 ソウルを南北に分ける大きな川、漢江(ハンガン)を渡るのだ。 標高差10〜20メートルか、事前に高低図を見ていて、ここは、ちょうど東京マラソンの佃(つくだ)大橋に相当するポイノトだと思っていた。

 しかし、実際は、それほどの傾斜ではなかった。 これならいけると思った。 脚の抵抗を感じることなしに、普通に走れたのだ。 35キロ地点はその登る途中。 

 35キロ地点で、3時間ペースからの貯金は、30秒弱になった。 ここの5キロで20秒減った。 このペースが続けば赤字に転落だ。 ペースを上げなくてはならない。 すでに30キロからペースを切り替えて上げている感覚で走っているのにだ。

 とにかく、次の1キロ、次の1キロと希望を繋いでいこうと思った。 ここから2キロ区間をキロ4分15秒で我慢したら、残りは4分20秒でOKだ。 だめもとでやってみようと思った。 ペースを上げる。 ここでの給水はパスして直進! もう1秒1秒の勝負になっている。 ゴールまで、水を取っている暇はない。

 幸い、事前の予測とおり、蚕室(チャムシル)大橋は、風が背中から押してくれた。 35〜36キロが4分16秒、次が4分14秒。 よし、いけるぞ。

 右折すると、これまた事前の予測どおり、風は逆風。 先に進むの困るという程ではないが、タイムは落ちる。 38キロを見落とし、39キロまでの2キロは、8分46秒。 やっぱりぎりぎりの勝負だ。

 39キロを過ぎて直線の大通りに出たら、、前方80mくらいに、横に広がった20〜30人の大集団が見えた。 風船の3時間ペースランナー率いる大集団なのだ。 ついに、ここまで追い上げて来た! 急に視界が明るくなった。

 40キロ通過 2時間50分27秒 自分の時計 同22秒 (ラップ21分31秒)

 残り9分40秒弱。 3時間ペースは9分20秒だから、きわどい勝負だ。 3時間の集団が見えたからといって安心してはいけない。 まだ、差があるのだ。 追い上げ追いつかなければならない。 力を緩めず、60m、40m、20mと近づいていく。

 41キロ地点あたりだろうか、完全に集団の中に入った。 隣のランナーが、「サムシガンうんたらこんたら」と韓国語で話しかけて来た。 「サムシガン」は「3時間」、これだけわかった。 きっと、3時間切れるぞ、とか言っているんだろう。 「ネー」(YES!)と元気よく答えておいた。

 次第にゴールのオリンピックスタジアムが近づいてくる。 1988年ソウルオリンピックの会場だ。 あそこに飛び込んで行くと思うと気持ちが高まる。

 スタジアムに向かう走路には人垣ができていた。 早くスタジアムに入りたい。 時計が気になる。 27分から、28分に変わった。 まだ、入口でない。 もう、呼吸全開、人が見ていようが、なりふり構わない走りになっている。 

 栄光のゲートからスタジアムへ。 トラックのふわふわした感触。 残り350m弱だ。 時計を見て計算。 間にあう。 会場アナウンスが、しきりに「サブスリーうんたらこんたら」「サブスリー・・・」と叫んでいる。 サヴスリーできるぞ、勝負だ、がんばれって言っているんだろう。

 第3コーナーでもう一度、時計を見て計算間違いのないことを確認。 ゴ^−ルはホームストレート中央だ。 ラストスパートをかけて、最後は、バンザイでゴール!

 ゴール 2時間59分42秒 (ラップ9分15秒)

 やったー ソウルでサウスリーができた! 夢にみた瞬間だ。 何度もあきらめそうになった厳しい展開のレースだっただけに、目頭が熱くなった。 周りでは、精魂尽き果てて倒れ込んでいる人、仲間と抱き合った喜んでいる人。 サブスリーはいいものだ。 みんな、この瞬間のため、日々走ってきたのだから。

 ゴール後、会場前で、家族と落ち合い嬉しい報告。 この報告のためにがんばれたとも言える。 走っている時間には間に合わなかったが、あの、終盤のくちゃくちゃな走りは見てもらわないでよかった。

オリンピックスタジアム

 なお、記録証は、後日送付〈日本事務局の説明では1か月程度)だが、大会のHPには個々の記録が検索できる(2日後にはできた)。

 

 2万5千ものランナー足を踏む神聖なロードで、思ったとおりの走りができたことは心の底から嬉しい。 サブスリーということでは、これで、東京とソウル、アジアの都市型2大マラソン制覇、5年連続、6回目となった。 (6番目の記録ではあるが) 

 昨年末から、好調を維持中。 年齢的にも無理と思っていた自己ベストも夢ではなくなってきている。 今年の夏はスピードを付けていきたい。 やっぱり、5000mは長距離走の基本だ。 18分前半で当たり前のように走れないと、マラソンで2時間55分に近づくのは難しい。 あっ、でも、富士登山競走もあるよなあ。 今年は欲張りな年になりそうだ。
 

距離 通過タイム ラップ コース
〜 スタートライン 0:00:08 - 光化門(クヮンファムン)
〜 5km 0:21:07 0:20:59 南大門(ナンデムン)、乙支路(ウルチロ)折り返し
〜 10km 0:41:55 0:20:48 清渓川(チョンゲチョン)沿いを下流へ
〜 15km 1:03:02 0:21:07 清渓川(チョンゲチョン)沿いを上流へ
〜 20km 1:24:13 0:21:11 大通り 鍾路 (チョンノ)を下る、東大門(トンデムン)
〜 中間点 1:28:54 - 大通り 鍾路 (チョンノ)を下る
〜 25km 1:45:41 0:21:28 大通り 千戸大路(チョンホデロ)
〜 30km 2:07:17 0:21:36 オリニ大公園横、小さなアップダウン
〜 35km 2:28:56 0:21:39 ソウルの森横
〜 40km 2:50:27 0:21:31 蚕室(チャムシル)大橋
〜 ゴール 2:59:42 0:09:15 オリンピック競技場